ルネサンス人文主義における道徳哲学と修辞学 : ポッジョの『貪欲について』の解釈をめぐって
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概要
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ルネサンス人文主義は、十四世紀イタリアにおいて、明確で決定的な運動となった。その運動の先駆的存在で、かつ最も偉大な人文主義者の一人が、ペトラルカであった。ペトラルカは、この意味で正当にも人文主義の父と呼ばれている。例えば、ペトラルカを父のように仰いでいたポッカッチョ、ブルーニ、ポッジョは、事実、人文主義研究がペトラルカによって道を開かれたという認識を、口をそろえるように表明している。ペトラルカによって方向づけられた人文主義運動、特にその初期の運動の基本線について、私は、ここではあえて次の三つにまとめたい。まず第一に、古代ギリシャ・ローマの著作を重視し、文献研究に励んだということである。特に古代ローマの精神世界への敬愛から、古代の写本を捜し求め、愛読し、時にはそれをモデルに著作したり、古代人の言葉を自分たちの著作にちりばめたりしたのである。第二に、あの偉大なローマ共和国、ローマ帝国は、古代ローマ人の徳virtuの力によるものだったと信じて、人文主義者は、この世俗世界を生きていく上での規範として、道徳哲学を重視し、古代人の倫理的な教えを積極的に学んでいったということである。第三に、古代世界の教養の中心であった修辞学的、雄弁術的な世界を模範として尊重し、格調高い文体、優雅な文体、雄弁で説得力のある文体と構成を追求していったということである。
- 1983-03-10
著者
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