ファシスト組合について : その運動史的変遷をめぐって
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ファシスト組合はファシズムのテロ行動(スクワドリズモ)の爆発と共に、それと表裏一体をなす形で成立し、発展した。後者が左翼系組織を武力で解体したあとをうけて、労働者、農民の組合、いわゆる赤色組織の加盟者をファシスト側に取り込むことを目指したものであった。その相互の補完作業により、反ファシスト側の抵抗、反撃を封殺できたのであった。他方二〇年代末、とりわけ三〇年代に入って、イタリア・ファシズムは協同体国家(Stato Corporativo)をファシズム国家の存在形態として大々的に内外に宣伝するに至る。この点からもイタリア・ファシズムにとって、組合問題が重要な比重を占めていたことが理解される。だがこの協同体国家に至るまでには様々な問題が介在して、ファシスト組合は紆余曲折を経なければならない。まずファシスト組合は具体的に何を目指そうとしたのか、また経営者側との関係はいかなるものであったのか。ファシスト組合はファシズム運動にとり、結局のところいかなる意味を保有していたのか。従ってファシスト組合の問題は、これら全てを包含し、かつより高次元的には協同体国家につながるところのファシズム国家とは何かという理論問題とも深く関わりつつ、ファシズム支配初期の重要な内政問題の一つを構成している。本稿では、以上の点全てに触れることはできない。ファシス組合の研究が本国イタリアでも開始されたばかりであるという現状であり、そのより全面的解明にはまだ日時が必要である。そこで本稿ではとりわけ運動史的側面に焦点をしぼって検討していく。
- イタリア学会の論文
- 1976-10-01