喜劇「カンデライオ」とその背景
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概要
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ジョルダーノ・ブルーノ Giordano Bruno の思想形成の歴史を顧みるとき、パリ時代はその思想的基盤が確立された時期ということができる。つまりこの時代にブルーノの、無常から恒常へという思想的立場の飛躍が完成され、流転の世界のなかに不変なる一者を見出す自覚が確立されたのである。この思想的飛躍の徴候をわれわれはかれの初期作品「カンデライオ」のなかに読みとることができる。すなわち「カンデライオ」は、その成立年代から見るとき、序文およびプロローグと、喜劇の内容をなす本文との二つの部分に分析され、その両者に顕示されている落差を通して、われわれはブルーノの思想が無常から恒常へと飛躍発展をなしとげた事実を認めることができるのである。この飛躍発展の理由を、「カンデライオ」の両部分および他のブルーノ著述と比較照合し、さらにその成立事情を当時のかれの生活とその時代背景のなかに探ることによって、内面的外面的に明かにしようとするのが本論の意図である。
- イタリア学会の論文
- 1970-01-20