レオパルディのダンテ観
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概要
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ペトラルカ以後、イタリア最高の抒情詩人とも目されるレオパルディがダンテをどう見ているかということは大いに興味を惹く問題であろう。しかし、レオパルディのダンテ観と云っても、別に彼がまとまったダンテ論あるいは神曲論といったものを残しているわけではなく、より所とするのは四千余頁に及ぶ尨大な量の雑録というか『随想録』"Zibaladone"の中に散見されるダンテあるいはダンテの作品について触れた断片的な部分なのであるが、そうした断片をひろい集めると、もとよりまとまった、明確なものではないとしても、ある程度のレオパルディのダンテに対する見解といったようなものがおのずと出てくるようである。さて、レオパルディの初期の詩に『ダンテの記念の碑に寄せて』"Sopra il monumento di Dante"という作品があるが、彼の詩のうちで直接にも間接にもダンテが詠みこまれているのはこの作品だけである。これは一八一八年にダンテの生地フィレンツェにダンテの記念碑建立の話が持ち上った折に創られた詩であって、ダンテの栄光を称える記念碑の建立に寄せて、イタリアの過去の栄光と十九世紀初頭の外国に隷従するイタリアの悲惨な状態と対照させて、民族の高揚を促すという一種の愛国詩であるが、そこではダンテは次のように形容されている。すなわち、-その(ダンテの)詩はメオニアの詩人(うたびと)(ホメロス)にも比肩せり-ある一人の詩人を称讃する場合、ホメロスと並び称するということは最大の讃辞であるが、またそれは同時に常套な陳腐な形容でもある。しかし、とにかくこの形容にあらわれている限りでは、レオパルディは詩人ダンテを最大級に評価しているわけである。
- 1965-01-20