乳児期における母親の育児行動に関する研究 : 低出生体重児を出産した母親と成熟児を出産した母親の比較
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概要
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社会構造の変化に伴って年々虐待が増加しており,また低出生体重児は成熟児より虐待の発生率が高いと報告されている。本研究の目的は,低出生体重児を出産し退院後3〜4ヵ月の母親の育児行動と成熟児を出産した4ヵ月の児を持つ母親の間に育児行動の違いがあるかどうか,また,あるとすればどのような特徴があるかを明らかにすることである。低出生体重児の母親56名とその家族53名および成熟児の母親252名とその家族228名を対象に,質問紙法による母親の生得的行動および虐待の危険因子と指摘されている育児行動に関する調査を実施した。その結果,以下のことが明らかになった。低出生体重児の母親と成熟児の母親を比較すると,1)低出生体重児の母親の「抱く」育児行動は有意に高かった。2)低出生体重児の母親の「満足度」は有意に低かった。3)低出生体重児の母親の生得的行動得点は有意に高かった。4)低出生体重児の母親は虐待と因果関係がある行動を有意に高頻度に示した。5)頻回に抱いている低出生体重児の母親の育児行動得点は有意に低かった。6)満足度が低い低出生体重児の母親の育児行動得点は有意に低かった。7)低出生体重児の年齢層が若い母親の満足度は有意に低かった。以上のことから,これらの結果は4ヵ月児健診の場で子どもの虐待の予測や母子関係を査定するうえでの基礎資料と位置づけられ,有効活用が可能であることが示唆された。