産前産後休業に関する実態調査 : 産後1年6ヵ月の女性と就業中の妊婦が持つ意識の検討
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概要
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産前産後休業は出産をひかえる女性の母体保護を目的とした制度である。労働基準法第65条,産前産後休暇制度(以下,制度とする)のなかで,必要な休業期間は産前6週,産後8週と定められている。本研究は産後1年6ヵ月の女性と妊娠後期の就業妊婦に対し,産前産後休業を取得することに関する意識調査の結果である。産後女性の調査では産前産後のいずれかの時期に就業した者は47.5%であり,そのうちパートタイム就業者は約4割を占めていた。常勤あるいはパートタイムのいずれの就業形態の女性も,事業所に制度が設置される場合に産前から産後にかけて就業を継続している率が高かった。パートタイマーの産後の復職は出産経験のある者のほうが率が高かった。産後に復職した女性の4割以上は分娩予定日前6週を過ぎた時期(制度で定める休業期間)に就業していた。復職者における制度の利用率は71.1%であり,制度の通りに産前6週間を休業した者は31.5%と少なかった。就業妊婦の50%が休業取得に対し気兼ねを感じていた。制度で定める休業期間を正しく理解していた者は54%であり,復職予定者の割合に満たなかった。また,制度の存在自体を知らなかった者が1%に認められた。以上より,産前休業を制度の通りに休業している者が少ない現状にあることが明らかになった。その背景に,就業女性自身に休業申請に対する気兼ねが存在すること,制度の内容が就業者に十分に認識されていないことなど,さまざまな問題が見いだされた。現状のままでは産前休暇を十分に取得できない就業者が増加することが推測される。産前の休暇取得が就業者の申請に基づいて初めて実施される現行制度の下では,当該女性が制度を気兼ねなく利用できるよう事業所や周囲の社会的配慮が必要である。
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