各種リポソーム試料の表面荷電量の測定
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概要
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コロイド滴定法によるリポソームの表面荷電の定量について検討を行った.正コロイド試薬としてポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを,負コロイド試薬としてポリビニル硫酸カリウムを用いた.リポソームは,精製したリン脂質を超音波照射によって作製した.滴定の結果,ホスファチジルコリンは同一分子内にあるリン酸基と第四級アミンとの分子内の強い塩形成のために,pH2〜11の全領域にわたって荷電0となった.ホスファチジルグリセロールはpH3以上では常に一定負荷電量,0.633×10^<-6>当量/10^<-6>総リン当量を示した.ホスファチジルエタノールアミンは,低いpHではリン酸基とアミノ基が塩形成をしているため荷電0であるが,-NH_3^+→-NH_2への変化に伴って塩形成がこわれてリン酸基が正コロイドと結合するようになり,pH10.5以上では一定負荷電量,0.612×10^<-6>当量/10^<-6>総リン当量が得られた.ホスファチジルセリンではpH6〜7及びpH10.5以上で,各々0.541及び1.087×10^<-6>当量/10^<-6>総リン当量の一定負荷電量をもつ二段階の解離がみられた.両者は各々,カルボキシル基及びリン酸基の荷電量に対応する.又,このことからカルボキシル基:リン酸基:アミノ基の構成比が1:1:1であることも示された.本法では試料量10〜20mgでpH2〜11までの広いpH領域にわたる滴定が可能であり,官能基の解離状態の検索並びに荷電定量が行える.独立2回以上の実験結果から再現性は良好であることが分かった.
- 社団法人日本分析化学会の論文
- 1987-07-05