鉄(III)リシンポリ酢酸型キレート樹脂錯体のヒ素吸着特性とその微量ヒ素(V)の予備濃縮/誘導結合プラズマ発光分析への応用

概要

論文の詳細を見る
誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)の前処理濃縮法として利用できる良好なヒ素イオン濃縮材料を得る目的で, それぞれ異なる官能基保護法を適用して, リシン二酢酸型(LDA)及びリシン三酢酸型キレート樹脂(LTA)を合成した. これらのキレート樹脂の鉄(III)錯体のヒ素(III)及びヒ素(V)に対する吸着特性を調べたところ, 過剰のカルボン酸基を有するLTAのほうが, LDAに比べて鉄(III)の吸着とヒ素(V)の吸着のいずれにおいても, 期待どおり早い吸着挙動を示した. しかし, 吸着能の点では, LDAがLTAに優り, 過剰のカルボン酸基の存在が必ずしもプラスになっていないことが分かった. そこで, LDAの鉄(III)錯体をヒ素(V)のICP-AES分析における予備濃縮分離材として利用することを試みたところ, 樹脂を充てんしたカラムに試料溶液を通して濃縮し, 次いで塩酸で溶出することにより, 少なくとも10^<-8> mol dm^<-3>のヒ素(V)を還元気化法を適用せずにICP-AES定量できることが分かった.
社団法人日本分析化学会の論文
1998-12-05