日常的世界観にもとづく実行可能な仕様記述言語NAIVE : その概要と世界観
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概要
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ソフトウェア開発の生産性および品質の向上にとって,ソフトウェア記述言語は最も根本的な役割を果たすものと考えられる.なぜなら,ソフトウェアの開発とは,つきつめるところ,「問題(要求)自体の表現とソフトウェア記述言語との間の写像操作」と言うことができ,ソフトウェア開発のあらゆる困難は,それら両者の間の階位的,構造的乖離からきていると考えられるからである.ここでもし,「問題自体の表現に近いレベルで仕様を書けば,それがそのまま実行もできる」ような言語が実現できれば,設計からプログラミング,ならびにテスト工程が大幅に省略され,ソフトウェア開発の困難のおおかたは解消する.こうしたねらいをもつ言語は,実行可能な仕様記述言語とよばれ,すでに種々のものが提案されている.しかし,現時点では,記述・読解性の点で難解,動的システムや大規模システムの記述が困難,データベース操作などを含む実用システム全体を作る能力が十分でない,などの難点を抱えており,その本来のねらいを十分達成したものは出現していない.ここで提案する言語NAIVEは,日常的世界観にもとづき,自然語に近い形で問題対象を記述する言語である.具体的には,実体,関係,行為,変化,行為主体(エージェント)などの基本概念からなる日常的世界観にもとづいており,データ構造,ポインタ,プロセス,データ入出力,同期通信などの従来の計算機プログラミング上の概念を隠蔽した言語である.さらに,静的事態の記述についてはすでに実績のある述語論理をカバーしている上,並行処理などの実世界の動的側面の記述までを一つの論理体系の中に収めた言語である.データベースプログラム言語としての機能も備えている.すでにインプリメントされており,実用規模のソフトウェアシステムの記述実験も進められている.本稿では,言語NAIVEについて,その背後にある世界観および論理体系について述べる.
- 1992-02-24