テンプレートを用いた翻訳機構
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概要
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現状の機械翻訳システムは完全翻訳とは程遠い.商用化された機械翻訳システムの一つであるATLASIIの弱点を分析すると,以下のような点が挙げられる.1.慣用表現に弱い.2.複文重文に弱い.3.前編集,後編集が不可欠である.これに対して, ATLASIIはユーザカスタマイズ機構により,いくつかの補強をおこなっている.a.ユーザによる単語,熟語登録ができる.b.専用文法を選択すれば,語句解釈,表現が変えられる.c.多義語に対する訳語を学習させられる.しかし,登録できる熟語は,完全に同じ表記でないと使えない.専用文法そのものはユーザ登録できない.このカスタマイズ機構は,複文,重文にはほとんど無力である.ユーザカスタマイズ機構が十分でないために「いつも同じ前(後)編集ばかりする」という不満がでる.実際,ATLASIIは,技術文,特にマニュアル翻訳を実用化目標にしているが,このような文書は,定型的表現が多い上に,その分野特有の慣用表現も多い.上記の機構で救えない表現は,何度でも同じ誤訳をしてしまう.慣用的,定型的表現は,名詞を置き換えるだけで翻訳可能な場合が多い.そこで簡単な対訳テンプレート対により定型文を翻訳する機構が欲しくなる.これは,そのような機構をATLASIIに組み込む試みである.
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1989-10-16