光線追跡法における高速アンチエイリアシング技法
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概要
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近年、ハードウェアの進歩により計算処理速度の向上が目覚ましく、質の高いCG(コンピュータグラフィックス)画像の制作が可能になりつつあるが、高品質画像には不可欠であるエイリアシング除去の問題は、今なお重要な課題である。アルゴリズムが簡単で適用が容易なため、現在もっとも広く使われているアンチエイリアシング法であるスーパーサンプリング(離散値サンプリング)法は、サンプル点の数に比例して計算負荷が大きくなり、エイリアス除去の精度に問題を残す手法である。また、Catmullの提唱したエリア(面積比)サンプリング法は、画素内の各多角形の面積に比例した輝度をその画素の輝度とするという手法で、面積を正確に計算するためエイリアシング除去の精度は良いが、隠面処理を考慮した面積計算アルゴリズムは複雑で、処理時間が長くなるという欠点がある。さらに、光線が円錐形であると仮定し、面積計算の負荷を多項式近似法で軽減し、光線追跡法にエリアサンプリングを適用したAmanatidesの論文もあるが、やはり円錐とプリミティブの交差面積の計算が複雑で、Crowの指摘した画素内での隠面処理については完全ではなく、一般的な場合のアルゴリズムにはなりにくいと言える。しかしながら、プリミティブのコヒーレンスを考慮しないスーパーサンプリング法には、精度の限界があるのに対し、画素内のプリミティブの面積を隠面処理を考慮しながら適当な速度で計算できれば、エリアサンプリング法はエイリアシング除去法として有効な手段となり得ると考えられる。我々の開発した手法は、システムが処理できる程度の簡単な図形に対しては即座に処理を行ない、複雑な図形に対しては画素領域を再帰分割し、より簡単ないくつかの図形とすることで、プリミティブの寄与率計算を高速に処理するWarnockスタイルのエリアサンプリング法であり、スーパーサンプリング法と比較して、精度と処理速度において優れた結果を得たので報告する。
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1989-03-15