Enzymatic Hydrolysis of β-glycans
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概要
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細胞壁の重合成分はpolyester, polypeptide, polysaccharideで, その中 polysaccharide はあらゆる細胞壁に広汎に存在し, かつ重要な成分である. しかもその構造は単一の糖, 単一の結合からできた単純なものから数種の糖, 数種の結合からできる複雑なものまである (Fig. 1,Table 2). その細胞壁の構造の解析に色々な酵素が利用されているが, 酵素作用を諭ずる前に酸分解について述べておく. 酸による分解様式は内部の結合より末端の結合の方が抵抗性があるが, ランダムに分解する. しかし結合によって難易度は異なり, 加水分解されやすい方から(α-1.2; α-1,4; α-1,3)>(β-1,2 : β-1,3)>(β1,6,β-1,4)>α-1,6となり(40). たとえば酵母のmannanの場合はα-1,2 : α-1,3だけが分解されα-1,6だけが残るようになる. このように酸分解は特異性があまりないが, 結合型を調べるのに広く用いられる. 酸素は特異性があり構造解析にも有利で, ここでは細胞壁物質の成分を形ずくっているβ-glucanの加水分解について述べる. A. 細胞壁成分の単離と精製 細胞壁成分を単離, 精製するもっともよい方法は目的とする成分以外の物質を酵素的に分解してしまうことで, それにはpolysaccharaseが主として利用されるが, protease, lipaseも有用である. 細胞壁は酵素のattakに対する感受性が多様であるので基質の性質も重要な問題になる. しかし, 抵抗性のある物質もあらかじめ温和な化学処理, 器械的な砕解を行って酵素作用を受けやすくすることができる. B C_1酵素について 以前に綿に対するcellulaseの作用についてpre-hydrolysis factorの有無により作用様相が変化することを示唆したが, これは着物につく蛾の幼虫によるwoolの消化も同じような現象で(16), まずwoolのdisulfide橋が還元されて, その後にproteaseが働く. C_1の作用も恐らくこれに似たもので, 綿繊維に作用させるときC_1がなければ, cellulaseは比較的inactiveであるがC_1があると綿を分解し, 可溶性の糖が遊離する. Selby(32)も同様な系を発見し, C_A因子は綿の伸長強度を失なわしめる因子であり, C_Xとは異なる. C_AとC_1は同一かどうかは未明であるがC_Xとは区別される. これと同様な例が微生物の細胞壁の溶解やpoly-β-hydroxybutyrate粒子の消化にも見られる. C. Endo-polysaccharase (A) 加水分解産物 この型の酵素は高分子にランダム様式で作用して低分子物質を産する. 種々のendo-polysaccharaseの加水分解産物はTable4に要約した. この酵素は基質重合度が低い程加水分解し難くなる. 最近"eliminase"が発見され, これはFig.3に示しているようにαのCからカルボニルへHを移動しβのCからgroupを切り離すもので還元末端の方から切って行く. (b) 酵素的加水分解におよぼす置換の影響 もっとも一般的には直鎖のpolysaccharideの糖を変えたり枝をもたせたりすることであるが置換の頻度が酵素作用に大きな影響を与える. その例はFig.5に示すCMCに対するcellulaseの作用で置換度(DS)を高めると阻害が大いになりDS1.0で完全に阻害される. またGuar fraction 〔chemical formula〕 はβ-mannanaseによって加水分解を受け難く, DS0.5でresistanceになる. 一般に高度に分岐した多糖類の方が分岐していないものよりresistanceであることが認められている. (c) Endo-polysaccharaseの特異性 β-1,3とβ-1,4の結合をもっているgiucanに対するglucanaseの作用を調べたところ, 2つの事実を発見した (1)β-glucanase切断するlinkageには特異的ではない. すなわち, cellulaseはlicheninのβ-1,3; β-1,4の両結合を切断し, laminarinのβ-1.3linkをランダムに切る酵素はlicheninのβ-1,4結合の方を優先的に切断する. (2)この両酵素によるβ-giucanの加水分解産物の還元末端の方の結合がcellulaseではβ-1,4でβ-1,3-glucanaseの方がβ-1,3結合である. このことから特異性は切断する結合にあるのではなく還元末端の方の結合にあるのではないかということを提唱したい. D. Exo-polysaccharaseこの酵素によるterminal unitの除去は非還元末端の方から起る. それには2つの型の酵素がり, 1つはexo-polysaccharaseで, もう1つはglycosidaseである. その他ester結合, ether結合, amide結合があり, ester結合を切るesteraseの代表としてcellobiose octaacetateのacetyl groupを除去すると酵素があるがこれはcellulose acetateには作用しない. Etber結合は天然にあまり存在しないし, また, 酵素作用に抵抗性が強いと考えられていたがlactic aicdとN-acetylmuramic acidの3-OHとの結合を加水分解する酵素を報告している. (33).
- 公益社団法人日本生物工学会の論文
- 1965-01-25