スギの耐凍性に関する研究(第1報) : 道南地方にあるスギの外形的な型と耐凍性との関係
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概要
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北海道の道南地方にあるスギ造林地の寒害状況を調査したところ、スギの外形的な違いによって被害程度に著しい差が認められた。なお被害程度とスギの外部形態との間に、ある傾向が認められたので、外部形態からスギの耐凍性の大きさを予想しI、IIおよびIII型のTypeに分類してみた。そして主として東北地方から導入された道南地方にあるスギについてこの予想をたしかめるためにいくつかの実験を行なった(図-1)。(1)松前林務署管内の条件のことなる被害常習地3カ所をえらんで系統別の被害調査を行なったところ、いずれも0.1%以内の危険率で、I、II型がIII型より被害が少なかった(表-1、図-2)。(2)1月12日に林齢10年、樹齢13年のI型27本とIII型20本を無作為にえらび、それぞれの木から枝をとって-20℃で20時間凍結し、凍害の程度を比較したところ、I型がIII型より凍害にかかる割合がはるかに少なかった(図-3)。(3)常習的被害地の5年生造林地のうちから一度も寒害を受けていないI型4本と寒害を受けたが樹冠が回復して生育の見込みのあるIII型6本をえらび、葉の細胞液の溶透濃度および耐凍性の季節的変化を調べた。その結果I型はIII型より滲透濃度も耐凍性もかなり高かった(図-4、図-5)。以上の結果から、I型はIII型のものより一般に耐凍性が高いことがわかったのでI型の苗木を植栽することによって被害をかなり減少させられる可能性がある。なおI型のなかでさらに選抜をくり返すとともに、I型を本州の各系統と比較検討することによって、かなり耐凍性の高い系統を選抜できる可能性がある。本研究は北大低温科学研究所酒井助教授のご指導およびご協力によって行なわれたもので、ここに謹んで謝意を表する
- 日本森林学会の論文
- 1965-02-25
著者
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