森林土壌および水分動態と林床植生(III) : 植物体の主要元素(N, P, K, Ca, Mg)含有率の季節変動と立地環境との関係
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
栃木県高原山の6か所の試験Plotにおいて, 林床植物の主要元素含有率の季節変動を調べ, 立地要因との対応関係を検討した。新植地で下刈り後に萌芽生長したキイチゴ類のN, P含有率が, 下刈り前より著しく高まった。同一種の場合は, 新植地に生育するものより, 林冠の閉鎖した林内に生育するもののほうが, N, P, K含有率が高かった。閉鎖した林内では, N, P, Kは開葉期に, Caは落葉期に最も高い含有率を示し, Mgは種や生育地の違いによって, 異なる季節変動を示した。斜面下部を中心に分布する草本は, N, P含有率が著しく高く, 広い分布範囲をもつ草本も, 斜面下部に生育するものほど, N, P含有率が高かった。植物のN含有率の違いには, 土壌の可給態窒素含有量や, 種による可給態窒素の吸収, 利用の違いが, 強く影響していると考えられる。KはNやPより種間差が明瞭であるが, 木本は草本より低い含有率を示す場合が多く, 季節変動も小さかった。Carex属の草本とミヤコザサは, Ca含有率が著しく低かった。同一種の場合, Mg含有率は斜面のより上部に生育するものほど高かった。K, Ca, Mgは土壌と植物体の含有率との間には, 強い対応関係がみられなかった。
- 日本森林学会の論文
- 1982-08-25