ブナ種子豊作後2年間の野ネズミ群集の動態

概要

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山形県温身平のブナ天然林で, ブナ種子豊作後2年間の野ネズミ群集の動態を記号放逐法で調査した。ヒメネズミ, アカネズミ, ヤチネズミ, およびハタネズミの4種が捕獲され, その動態は2年間で大きく異なっていた。ブナ種子豊作翌年の1982年7月にハタネズミは約100頭・ha^<-1>と大発生状態であったが, 以後急減した。アカネズミもハタネズミと似た傾向を示した。ヒメネズミ, ヤチネズミは低密度であった。一方, 翌1983年には, ハタネズミがほとんど捕獲されず, ヒメネズミが常に優占し, アカネズミ, ヤチネズミは前年に比べ低密度であった。野ネズミ群集の現存量は, 1982年の最大, 最小がそれぞれ3,980,1,159g・ha^<-1>であったが, 1983年には最大で954g・ha^<-1>しかなかった。4種ともに春, 秋の年2回繁殖期があり, 群集動態を決定する上で春の繁殖期が重要である。以上のことから, ブナ種子の豊作は, 越冬個体の餌の状態を好転させ, 個体の移出入の激しい種(ここではハタネズミ)の林内への集中による大発生を引き起こす可能性があると考えられた。
1988-11-01