枝張りの遺伝的性質に関する研究
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概要
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さきの報告では, スギの胸高直径(D)とクローネ直径(B)との関係を示す直線式B=a+bDにおいて, 2つの常数比は品種を通じて一定であって, ほぼa/b=12の関係が保たれていることを推定した。したがって, 枝張り, すなわち, 胸高直径とクローネ直径との相対的関係を示す常数として, 直線式の回帰係数をb=B/(D+12)の形で示すことのできることから, この常数を枝張度と呼ぶことを提案した。この報告は, このような枝張りの規則性が普遍妥当なものとして一般的に認められるものかどうかを, 戸田の調べた4個林分のクローン・クモトウシスギを材料として検討したものである。その結果, クモトウシの枝張りについてはつぎのことが確められた。1) 胸高直径とクローネ直径との間には, 他の形質間ではみられないような, 極めて高い相関(r=0.96)が認められた。2) 胸高直径に対するクローネ直径の回帰は直線的であって, その回帰直線式における常数比はa/b=11.64となり, さきに見出された枝張りの規則性を示すa/b=12とよく一致する。3) クモトウシの各クローン集団の平均枝張度は10.05〜10.21,平均10.14で, 集団の年齢や地位にかかわらず, ほとんど同じ集団平均値を示した。以上の結果から, 枝張りの規則性は枝張りの遺伝的性質, すなわち, 胸高直径とクローネ直径とがともに同じ遺伝子の働きに支配されていることによるものであることが考察され, 規則性にもとづく枝張度が胸高直径に対するクローネ直径の回帰係数の形で示されたことの根拠もこのような枝張りの遺伝的性質によるものと考えた。また, 枝張度が遺伝性を有する形質であることが明らかとなった結果, 枝張度の環境分散の大きさがクモトウシのクローン集団から容易に推定されることになり, したがって, これとの比較によって, 他の雑種集団における枝張度の広い意味の遺伝力をも容易に推定できることになった。なお, 枝張りの規則性は, スギ以外の樹種としては, 青森地方のヒバにおいても認められた。すなわち, ヒバの枝張度は, つぎの数式によって求められることになり, 増川地方のヒバの枝張度は大畑地方のそれよりも35%ほど小さい。b=B/(D+33)
- 日本森林学会の論文
- 1964-03-25
著者
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