明惠における神と仏(<特集>宗教-相克と平和)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
明惠は鎌倉仏教の著名な仏教者であるが、同時に日本古来の神々に対する篤い神祇信仰を有していた。本稿は、このような明惠の神祇信仰が彼の思想の中でどのような位置を占めているのか、明惠において神と仏の関係はどのようなものであったかという問題を検討しようとするものである。中世日本においてはすでに本地垂迹説が広まり、日本古来の神々にその本地として様々な仏たちが配当されていた。明惠が後半生に住した高山寺には住吉明神、春日明神などが勧請されていたが、後者は明惠に数度託宣を下していて重要な位置を占めている。この春日明神に対する熱烈な信仰は、本地垂迹説における本地仏たる釈迦に対する信仰に由来するのではなく、仏教以前の信仰と考えざるを得ない。ただしその信仰内容は仏教が浸透してこれを規定している。このような信仰は彼が交わりのあった笠置の貞慶より受け継いだのではないかと考えられる。明惠の神祇信仰は時代の下る日蓮などと比較してみると、その崇敬の念の自然さや素直さにおいて、個人の中に神と仏とが何の矛盾なく調和しているのを見ることができる。
- 2005-09-30
著者
関連論文
- 明惠における神と仏(宗教-相克と平和)
- 中国南北朝仏教における一乗思想 : 『涅槃経』を中心として
- 中国仏教における仏性解釈の種々相--道生と法雲を中心に
- 中国・日本仏教における「仏説」の意味--天台智[ギ]と日蓮の場合 (経典とは何か(1)仏説の意味)
- 室町時代における『法華経』の唱導
- 世親『法華論』訳注 (3)
- 中国隋唐仏教における衆生観 : 天台・三論を中心に
- 日本天台における「仏種」の解釈
- 『法華経直談鈔』における「寿量品」解釈の検討
- 『法華経直談鈔』における「方便品」解釈の検討
- 中国六朝仏教における『涅槃経』の受容
- 日蓮のめざすもの--『立正安国論』を中心に
- 南岳慧思の仏性思想
- 世親『法華論』訳注(2)
- 世親『法華論』訳注(1)
- 天台と三論--その異質性と類似性
- 中國佛教における「佛種」の語の解釈をめぐって
- 天台教学における一闡提の扱いについて
- 天台智[ギ]における中道と仏性
- 聖徳太子--十七条憲法と三経義疏を中心に (第9回鎌倉夏期宗教講座講演 特集 聖徳太子)
- 天台智[ギ]における四悉檀の意義
- 羅什訳の問題点--「仏種」の語の解釈をめぐって
- 下田正弘著『涅槃経の研究』--大乗経典の研究方法試論