ケモカインと肺疾患(第24回日本気管支学会総会)
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概要
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ケモカインはその多くが白血球走化性・活性化作用を有する塩基性ヘパリン結合性のタンパク質である。この数年間の私たちを中心とした動物疾患モデルにおける中和抗体投与実験, ならびに米国のグループによる生体工学マウスの解析により, ケモカインが新規抗炎症剤の重要なターゲットとして注目されている。ここではこれらケモカイン研究のoverviewと, 以下の私たちによる最近の2つの免疫/炎症肺疾患モデルのケモカインを中心とした解析を紹介する。1)OVA吸入喘息モデルマウスでは, ケモカインの1つであるTARCの産生誘導が気道上皮細胞を中心に経時的に起こるとともに, 好酸球を主とした著明な白血球浸潤が観られ, 抗TARC抗体投与により劇的な好酸球浸潤抑制とTh2サイトカイン産生の阻害を認めた。この実験結果はケモカインとその受容体が気管支喘息の新しい治療標的となりうることを示唆している。2)P.acnesによる急性肺炎症モデルにおいて, 成熟樹状細胞の所属リンパ節への移動に関わるSLCに対する中和抗体を投与すると, 予想に反し炎症が非常に増悪化することが判明した。この結果は病原菌を貧食し活性化された樹状細胞は, 本来すみやかに細菌除去と宿主免疫開始という重要な役割を担うべきところ, 活性化された状態で肺野にとどまり炎症介在因子を放出し続けるがために, 病原菌侵入部位での炎症反応が増悪化したものと考えられる。炎症と局所免疫が不可分な現象として, ケモカインによってリクルートされる樹状細胞によって制御されるという新しい概念を提供する。
- 2001-12-25
著者
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赤出川 賢治
千葉大学医学部呼吸器内科
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赤出川 賢治
千葉大学医学部呼吸器内科:東京大学医学部分子予防医学
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西脇 徹
千葉大学医学部呼吸器内科
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西脇 徹
千葉大学医学部呼吸器内科:東京大学医学部分子予防医学
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松島 剛治
東京大学医学部分子予防医学
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