金融市場における投資家行動と価格変動に関する研究(エージェント・分散人工知能)(<特集>人工知能分野における博士論文)
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概要
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本論文では,行動経済学における議論を背景とし,金融市場における投資家行動と資産価格変動の関連性について論じている.本研究では,エージェントベースモデルおよび実証分析の両者のアプローチにより分析を行った.1章は序論であり,2章では,行動経済学のファイナンス分野における位置づけについて述べ,エージェントベースモデルのファイナンス分野への応用について議論を行っている.3章では,実証分析として,日本の株式市場と天候の関係に焦点を当て分析を実施し,株価の動きと天候の間には,統計的に有意な関係があることを確認している.これらの結果は,伝統的ファイナンスが,これまで仮定してきた合理的な意思決定の仮定の再考を促すものである.4章では,5章および6章の分析に用いたコンピュータ上の金融市場の設計を説明した.5章では,多様な投資家が取引を行う市場における実験を通じ,合理的でない投資家が市場に存在し続けるメカニズムが市場に存在することを見いだしている.6章では,VaR(Value at Risk)やポートフォリオインシュアランスなど,現実の市場において用いられているリスクマネジメント手法が市場に与える影響について分析を行い,その中でリスクマネジメントが直接的および間接的に価格に対し悪影響を与える可能性のあることを見いだした.7章では,本研究の成果および今後の課題について要約した.
- 2005-01-01