自発的学習環境を目指す多桁減算学習のための計算機支援システムに関する研究(問題解決支援環境)(<特集>人工知能分野における博士論文)
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概要
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算数科による学習支援の新しい方法の開拓を目指し, 自発的学習による深い理解を目指す多桁減算学習のための計算機支援システムに関する研究を進めた.論文は, 以下の二つの研究を中心にまとめた.(1)「馴染みのない発想から学ぶ」学習環境は, 教える側と学ぶ側の立場が逆転する工夫と, 馴染みのない計算手順に遭遇して多桁減算の計算を深く考えるきっかけをつくる工夫がなされている.この計算手順は, 日本の小学校で一般的に引き算に用いる「上位の数から数(1または10など)を借りる」考え方とは異なる法則に従って行われる.小学校高学年を対象とした研究授業では, くり下がりのある引き算に十分慣れた学習者がこの学習環境に触れ, 自己の計算手順の意味を改めて意識することを確認している.さらに, 計算手順を学習者の思考に基づき組み立てて計算機で試すことができる機能を導入し, 学習者がより深くかつ多面的に計算を考えるようになることを確認している.(2)学習履歴分析システムは, 学習環境を客観的に評価するために, 計算機が学習者の操作内容を記録することができる機能に着目し, 記録, 再生, 意味分けと群分けを行うプログラムによって構成されている.操作履歴に着目した分析手法により, 学習者の思考を客観的な面と主観的な面の双方から捉えることができる.計算手順を構築する場面では, その過程から学習者の考え方の移り変わりがわかり, 学習環境の効果を確認することができている.
- 社団法人人工知能学会の論文
- 2001-11-01