水素イオン濃度の電氣的測定法
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概要
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電氣的測定法は比色測定法よりも十倍以上精密にして而も『スタウト』麦酒の如き、其他濃色液に適用することを得、此方法は一八九三年始めて『オストワルド』氏によりて用ひられたものにして工業的にはサンド及ロー両氏により冶金法、鞣皮法に應用せられ、次で麺〓及牛乳等の消化の研究、細菌學上に於ては榮養基の酸度基準決定等に利用せらるゝに到り、尚ほ進んで一般醗酵學上にも用ひられんとしつゝあり。此方法を用ふるに際して、先づ電氣の概念的知識を要す、単純なる一個の電池、例えば『レクランシエ』電池の起電力を生ずるは次の理由による、一ケの金属棒(亞鉛)を液中に浸すときは其液中に溶解して亞鉛イオンZn→Zn+eとなり陽電氣を帯びる為めに、起電力を構成す、其起電力なるものは、實際は『イオン』状態に於ける亞鉛の含有するよりも、金属状亞鉛の含有する過剰の『エネルギー』なり。然れども、若し亞鉛イオンが既に液中に存在するときは、其亞鉛イオンは、金属亞鉛となりて過剰の『エネルギー』即ち電子を吸収し、電路内にある起電力を低下す、之と全く同様に白金電極の白金黒上に薄き層に於て吸収せられたる水素瓦斯は水素瓦斯棒を形成し、其水素瓦斯は試驗液例へば麦酒中に溶解し水素イオンH_2→2H・+eとなりて陽電氣を帯ぶ、為めに水素棒は除電子を帯び、これが麦酒中に浸されある適當なる極に接續せる針金を沿ふて流れて起電力を生ず、然れども常に水素イオンは既に麦酒中に存在するを以て、其水素イオンは棒上に沈澱し、電極中の起電力を低下す。故に試驗液即ち麦酒を入れたる試驗電池の起電力を一定の條件の下に於て測定し、之を圖表に照らして其れに相當するPHを知るものなり。此装置に種々あり、今『ヴエント』氏の電氣滴定装置につきて説明せん。
- 1925-05-15
著者
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