電子波で見る量子の世界
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概要
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電子は電気を帯びた粒子だが, 同時に波の性質も持っている.この電子波の波長はきわめて短い.このため, 極微の世界の観察や計測が可能になる.我々は, レーザー光のような"輝度の高い電界放出電子線"の実現を目指して開発を繰り返してきたが, 最近開発した1MVの電子線では, 30年前に比べると輝度が4桁も高くなった.干渉性のよい電子線の実現によって, 電子線の干渉実験が容易にできるようになり, まず量子力学の"思考実験"が可能になってきた.実例は, 単一電子を用いた二重スリットの干渉実験や, 電子が磁場に触れていなくても物理的な影響を受けるというアハラノフ・ボーム効果の検証実験である.さらに干渉性のよい電子線は, 電子波の位相を観測することによって, 姿を捉えることのできなかった超伝導体中の磁束量子の動的挙動の観察が可能になった.今後, この手法は, ナノの世界で顔を出し始めた量子現象を解き明かすためのツールとして活用していきたい.
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 2002-02-05