千九百二十三年九月一日東京大火災の直後被害樹に大發生せる橙黄色菌に就て
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概要
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大正十二年九月一目東京市大火災の際市内各所に於て焼枯せる諸種の樹木に鮮美なる橙黄色菌の夥しく發育せることは多數の人の注意を引きたる所にして其の胞子の形態、着色并胞子、發生の状況より考察して「モニリヤ」Monilia aurea 菌なることは疑なきことなるが如し (胞子は單細胞にして微黄色を呈し球形、卵形又は短楕圓形をなし巾一二・八一一九・二「ミクロン」長さ一六・○一二五・六「ミクロン」あり)而して右分生胞子を醤油寒天培養基に純粹培養し置きたるに培養後五十日前後にして培養基面に多數の成熟せるる子嚢殻及子嚢胞子を生せり。同時に曩に多數の分生胞子を發生せし焼枯せるアカマツの表皮内にも形態同一なる子嚢を發見せり、即ち「モニリヤ」菌の子嚢時代としては先づ菌核を形成し而して後に子嚢盤を構成するものなるにも拘はらず其の完仝結實體として子嚢殼を作りたるは誠に興味ある事實なりしを以て培養基及松の表皮内に生じたる子嚢殼中より單一なる子嚢胞子を採り出し數回に亘り之れを人工培養基に培養し置きたるに形態、着色共に元のものと全く同一なる分生胞子を形成せるを認めたり。子嚢胞子は子嚢内に八個ありて黒褐色、乃至黒色にして單細胞長さ一七・六一二二・四「ミクロン」巾一二・○一一三・六「ミクロン」を有す。此の子嚢時代は anthostomella 屬に該當するものなるが如し、而して本菌屬の分生胞子時代に就きては未だ明確に記載されたるものなく且培養試驗の結果前述せる二胞子型の生活關係は大體に於て誤なきものと認めらるゝを以て Monilia aurea は Anthostomella 屬の分生胞子時代なるが如く思惟せらるゝなり。
- 日本植物病理学会の論文
- 1925-08-15
著者
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