地域特化, 都市の多様性と都市の成長・衰退
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概要
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現代の都市では, 集積の経済が存在することで, 都市・地域経済は収穫逓増となることから, 集積の経済のはたす役割が非常に大きくなっている.内生的成長理論では, 知識波及という観点から, 都市の発展と集積の経済における動学的外部効果の関係について研究が進められている.これらの研究は, 知識波及は都市あるいは都市産業においてこそ重要な役割をはたしており, 地域特化, 都市の多様性, 地域独占, 地域競争などの都市の生産環境条件が外部効果を通じて, 長期的な成長を促進させるという考え方に基づいている.知識波及の享受において, MAR(Marshall-Arrow-Romer)理論では, 地域特化と地域独占が重視され, MAR-Porter理論では, 地域特化と地域競争が重視され, Jacobs理論では, 都市の多様性と地域競争が重視されているが, 動学的外部効果についての研究は, これらの理論を体系的に分析したものである.本稿では, 経済基盤モデルの枠組みを利用して, 都市産業の従業者数の観点から, ある時点における都市の生産環境条件と都市圏の成長・衰退がどのような関係にあるのかを分析している.80都市圏の49産業を分析対象として, 1972年における基盤産業, 独占的産業, 競争的産業の従業者数が1972〜96年の都市圏の人口規模の成長率にどのような影響を与えているのかを分析した.推定結果から, 日本の都市圏の成長・衰退では, 都市産業の傾向として, 地域特化, 地域独占の影響が強く, 地域競争の影響は弱いということが判明した.また, 都市の多様性では, 都市の多様性の測度であるハーシュマン・ハーフィンダール指数によって, 都市圏の人口規模と都市の多様性の相関関係を調べるとともに, アメリカ合衆国との比較を行なった.その結果, 日本では, 都市圏の人口規模に関わらず, いずれの産業部門でも同じ程度の多様性があり, 都市間, 都市内のどちらでも多様化が進んでいることが判明した.
- 経済地理学会の論文
- 2001-09-30
著者
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