1990年代における石油化学工業の産業再編と立地再編
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概要
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本稿の目的は,90年代における石油化学工業の再編動向を検討し,その立地再編のメカニズムを解明するとともに,産業の成熟局面における産業再編と立地再編の関係についての分析視角を提供することにある.これまでの工業地理学,工業立地論の研究では,産業の成長局面における工場立地や産業全体の立地動向分析を主たる研究対象としており,成熟局面における立地再編についての研究は石炭産業や造船業など一部の産業について行われてきたにすぎない.しかし近年では,日本の基幹産業とされてきた,石油精製,石油化学,自動車などの産業で,合併,事業統合といった産業再編が,経営合理化の追求の結果として,立地再編を伴いながら進められている.本稿では,石油化学工業を事例として,高度経済成長期に形成されたいわゆる「東西立地」体系が,90年代に産業の再編成を基軸としつつ,いかに変容しているかについて検討を加えた.その結果,石油化学工業では,立地再編後においても東西立地型の工場配置を維持するために,相互に補完する形の工場配置を持つ企業同士の合併,事業統合が進められつつあることが明らかとなった.すなわち,高度成長期に形成された東西立地の原則が,再編による集約を伴いながら産業の成熟局面においても貫徹しているのである.こうした傾向は,他の構造不況業種においても進展する可能性が指摘できる.
- 2001-03-31
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