情報化時代における労働と空間の新たな関係 : 職住接近型労働の地理学的課題(<特集>産業空間および生活空間の再編と交通・通信・情報)
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概要
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既存産業の利潤率低下傾向, そして情報通信技術の発展を通じた産業構造と生産方式の転換を背景に, 職住接近型労働の増加がみられる.職住接近型労働は, 都市発展, 労働の空間的配置, そして産業と空間との関係などの重要な地理学的課題を提起している.本稿は, 今日の職住接近型労働が提起する地理学的諸問題を整理し, サービス化と情報化時代における都市と産業地域の分析視角を検討することを目的としている.職住接近型労働による労働の空間的再配置を通じた都市回帰やポストモダン都市形成の背後には, 都市間と都市内での不均等発展, そして新たな産業への資本投下の企てがある.また職住接近労働は, 必ずしも柔軟で自律的な労働過程を保証するものではなく, その多くは空間をこえた統制下におかれている.さらに職住接近型労働は, 地域内あるいは地域間の支配と分業のネットワーク下におかれており, 職種的あるいはジェンダー的分断も指摘される.すなわち職住接近型労働者の大半は, 柔軟な生産システムを維持し, 生産の再編のコストを担う周辺労働者として位置づけうる.これらのことから, 職住接近型労働は, 生産の場と消費の場との統合を可能にする代替的労働形態ではなく, 旧来型生産システムの労働形態に接合するものとして捉えられる.今後の課題として, 職住近接型労働を通じた空間的分業や職住接近型労働における労働過程の, より具体的な実証分析とともに, これらと関連する, 産業構造の転換ならびに資本投下との関連の総体的理解が必要とされよう.
- 2000-12-31
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