花き生産停滞下における産地の構造変動 : 長野県茅野市の事例
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概要
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日本農業が全般的に混迷する中にあって, 花き生産は, 1960年代以降, 全国的に拡大した特徴的部門である.しかし, 近年市場構造の変化を迎え, 産地は多くの課題に直面している.本研究では, とくに1980年以降の花きの生産と流通の動向を踏まえ, 農家経営の地域的特質に着目し, 産地内部の構造変動とこれに付随した課題を, 長野県茅野市を事例に明らかにした.結論として以下の諸点を指摘できる. 1)1980年代以降の市場構造の変化に対する当地域の花き生産農家の対応には地域的差異が認められる.とくに, 生産過程における施設花きの導入の機会は, 当該主品目の共同育苗事業への参加体制と農協の支援体制, 耕作地条件の変化に現れた集落ごとの存立基盤に条件付けられた. 2)施設花きへ転換を図った集落では, 農家経営が多様化し, 現時点では産地全体の流通過程における組織的対応を限定的なものに留めている. 3)先進的農家の行う販路拡大は, 個別的対応として有効であっても, 依然大勢を占める産地全体の卸売市場出荷の量的減少につながり, 産地の市場評価の低落に直結する可能性がある. 4)今後, 当地域の花き生産農家は, 産地内の地域性と農家経営の多様性を活かす新たな方策を, 集落, 農協, 行政と連携し打ち出すのか, 画一的な産地統一を推し進めるのか岐路に立たされている.
- 経済地理学会の論文
- 2000-06-30
著者
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