ヨーロッパにおける国境を越えた地方自治体間連携
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概要
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本稿は, ヨーロッパにおける国境を越えた地方自治体間連携の現状を明らかにし, 連携が活発化してきた要因を考察するものである.国境を越えた地方自治体間連携には, 単なる地方自治体間の交流にとどまらず, 独自の事務局や議会を設置し共通政策を策定, 実施するケースも多い.例えばEU内の国境地域, とりわけライン川流域国の国境地域における連携は, 1960年代から1970年代にかけて設立され, 議会など制度化された連携組織を持ち事業内容も幅広い.他方, 東欧諸国とEUとの国境地域における連携は, 主にインフラストラクチャーの整備や環境改善事業の分野で推進され, 同地域へのEUの国境地域政策の適用を機に, 1990年代に入り活発化してきたものである.東欧諸国間の国境地域における連携は, 着手されてからまだ日が浅く, その制度化はあまり進行していない.連携が活発化してきた要因には, 環境問題などの越境的な問題の悪化により統一的な国境地域対策の必要性が増大したこと, 統合が進むなかで地域間競争が激化してきたこと, 地域間格差の是正の必要性が増大してきたこと, 国民国家概念の相対化とともに国民国家形成以前に存在していた地域意識が再生してきたことなどが挙げられる.連携の制度や機能そして活発化の要因には, 地域的な差異を見ることができる.こうした国境を越えた地方自治体間連携が, 国家の枠組みを越えて水平的なネットワークを形成するとともに, 国家から独立した独自の構成要素としてヨーロッパという空間で自己を主張し始めようとしている点が注目される.
- 経済地理学会の論文
- 1999-06-30
著者
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