グローバル下の北海道経済と地域振興の課題
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概要
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本論は,構造不況期からグローバル化が進み始める昭和50年代の北海道の産業と地域構造(地域階層システム)を実証しその展望を論じたものである. 北海道の産業は,素材型工業を中心にした構造不況期に農・漁業・鉱業の低下と同時に,日本の地域経済の中でも特に大きな生産力の低下を経験した.ハイテク産業の多くを含む電気機器部門は,北海道でも伸びてきているが,この分野の地方展開の中心は関東・東北(特に南東北)であって北海道への展開は弱い.研究開発部門の展開は主に関東であって,北海道のハイテク産業も量産工場の立地という側面が強い.しかも地域的には,工業機能も含めて,札幌圏一極集中が顕著である. 北海道の主要産業の停滞は,日本経済の中で補完的・植民地的に形成されてきた産業構造に要因があるが,その急速な衰退は,1980年代に入って進むグローバル化に規定されている.輸入木材,輸入石炭の急増は林業や鉱業のみならず,関連製造業においても,地域経済の産業連関を断ち切る方向で推移している. 北海道の地域構造は,高度成長期に札幌を頂点とし,旭川などの中核都市-それぞれの圏域の中小都市-農村漁村という階層システムとして形成されてきた.とくに中核都市は,札幌・東京に人口を流出させながら,その圏域の人口を吸収することによって成長を遂げてきたが,50年代後半から札幌への流出が増加し,その結果,札幌一極集中が顕著になりつつあり,それは「その他」地域の全般的衰退に結び付いている. こうした現状から地域振興を展望するには,中核都市を軸に均衡ある産業政策と各地域の地域振興の実践を結合し,重層的な地域構造に転換することである.
- 経済地理学会の論文
- 1991-03-31