経済的中枢管理機能からみた日本の主要都市と都市システム
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概要
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本論は民間大企業の本社と支所を用いて日本の主要都市を検討し,都市システムを提示したものである.研究対象期間は1950〜2000年である.最初に分析対象企業の内容と本社機能からみた主要都市の状況について検討した.1950〜2000年を通して本社の最多都市は東京であり,第2位は大阪である.東京の本社数(登記上)比率は最近になるほどやや低下傾向にある.しかし,複数本社制を考慮すると,東京と大阪との差は依然として大きなものがある.続いて支所機能から主要都市の,とくに支所数,支所の上下関係,従業者数による本社と支所の規模,テリトリーについて検討した.主要な結果として,支所数からみると,近年の大阪と札幌の地位低下,福岡と仙台の上昇などが明らかになったことなどがあげられる.大阪は支所数からみると,1960〜1975年の間第1位の都市であったが,1980年に東京に抜かれる.以後,2000年まで東京との差は開く一方である.それどころか,最近では名古屋との差が縮小傾向にある.福岡と仙台の上昇,札幌の低下も重要である.この3市に広島を加えて広域中心都市と呼ぶが,この4市が最も横並びの状態にあったのは1970年である.しかし,それ以後2000年まで,上記のような変化が生じ,広域中心都市としての横並び状態は消滅した.同時に,都市間の階層という点では1970年が最も明確であったが,それ以後2000年まで,都市間の階層は崩れる傾向にある(表2,図2).この変化を業種面からみると,「鉄鋼諸機械」(こういう業種名は主資料として使用した『会社年鑑』(日本経済新聞社刊)や『会社職員録』(ダイヤモンド社刊)には無い.この分野の企業は,これら資料の中では「鉄鋼」「金属」「諸機械」「非鉄金属]「電機・電線」などさまざまな呼称が使用されていて時系列的にみても統一されていない.そのために,筆者が統一的な呼称として,この表記を使用したものである)の支所数の多寡が重要である.たとえば,大阪と東京を比べると1980年まで大阪の方が多いが,1985では逆転している.大阪と名古屋を比べると1985年まで大阪の方が多いが,1990年では逆転している.支所数からみた大阪の地位が低下傾向にある要因は,この業種において東京と名古屋を下回るようになったことが大きい(表5).札幌と仙台の地位の逆転も同様のことが指摘できる.1970年までは札幌の方がこの業種の支所数が多かったが,1980年に逆転し,2000年までその差は開く一方である(表5).各都市の支所のレベルは一様ではない.ある都市の支所の管轄下の支所という事例がある.それを2000年について調査したものが表6である.東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・広島・札幌の支所のレベルは高いが,静岡や北九州の支所の多くは名古屋支所,福岡支所の管轄下にある.このように表6は企業の支所の格付けから各都市の格付けをみることを可能にする.東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・広島・札幌の支所のレベルが高いということは,これら7都市が広いテリトリーをもっているということでもある.その状況は図4に示されている.これら7都市の現在(2000年)のテリトリーは1970年に明確になったことも指摘できた.これらをふまえて東京・大阪・名古屋に本社をおく企業の主要都市への支所配置率を用いて,都市間の結合状況を検討し,都市システムとして提示した(図6, 7, 8).その結果,日本の主要都市は東京を頂点に相互に強い結合関係を示していることが明らかにされた.
- 経済地理学会の論文
- 2004-06-30
著者
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