ドイツにおける都市更新事業に伴う住宅地域変容 : 1970年代以降のニュルンベルクを事例として
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概要
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本稿は,ドイツ・ニュルンベルクにおける性格の異なる2事業を事例として,都市更新事業に伴う住宅地域の変容を建築物の形態的変化ならびに社会的変化の観点から明らかにすることを目的にする.ドイツでは1970年代前半以降に既成市街地における衰退地域の再生を目指す更新事業が実施された.初期事業では短期間に敷地形状が改変され,街路や公共施設が整備されるだけでなく,改築・改修による住宅の形態的・機能的改善がめざましく,改築による転居世帯も多いため人口構造も大きく変化した.さらに中・長期的には住宅床面積の増加や住宅機能改善がみられ,外国人世帯に加え,子どものいるドイツ人世帯も増加している.ただし小規模住宅も立地しており,単身者を中心にした小規模世帯が短期間で移動する傾向もみられる.初期事業において近隣社会関係の崩壊が批判され,その反省から80年代以降の事業では主に既存住宅が改修・改築されたが,狭小で機能的に不十分な住宅が多数残存した.事業期間も住民が居住し続け,人口構造への短期的な影響は小さかった.だだし中・長期的には面積的・機能的に不十分な低家賃の賃貸住宅が残存したため,中・低収入世帯である外国人や子どものいる世帯の増加が著しい.短期間で転入・転出を繰り返す世帯が他地区よりも増加しており,住民相互による良好な近隣関係を醸成する環境とは言い難い.既存住宅を活用した更新事業が社会的な衰退地域を維持・強化しており,中・長期的な社会的変動において課題が残されている.
- 経済地理学会の論文
- 2003-06-30
著者
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