裸子植物の系統復元に関する最近の研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
系統復元に関する論争は, 形態進化の解釈だけですんだ時代から, 方法論の検討を抜きにはできない時代に移りつつある.このような背景を考え, 本論では方法論についても, かなりの分量を割いたつもりである.他方, 実際の系統に関する説は, 図1, 2で明らかなように, 多様な説の乱立する姿が現状であり, 特定の説をもって定説とすることは諦めざるを得なかった.矢原と任(1988)は, DNAによる系統樹をもとに形態形質の進化を検討する, という手順が今後の主流になると主張している.つまり, 分子系統学的方法は形態学的なデータによる方法を遥かに凌いでいるため, まず分子系統学的方法により真実により近い系統樹を作成し, その系統樹上に形質を当てはめて形態の進化を知る, というのが最もよい手段ということである.しかしシダ種子類など絶滅分類群の系統を分子系統学的方法で復元することは, おそらくできない.私自身はDoyle and Donoghue (1992)の「ごく最近に分化した分類群や, 化石の乏しい分類群では化石記録に頼る必要はないが, 維管束植物のように豊富な化石記録の残っている分類群では, 化石なしでは不十分である」という主張に賛成である.いずれにせよ, しばらくはさまざまな方法による系統解析が, その方法論と分析結果を主張する, という状態がつづくものと思われる.裸子植物という豊富な化石記録をもつ分類群の研究は, このような, さまざまな方法が互いに検証を重ねるのに格好の群であり, 分析結果, 方法論の双方から注目していくべきである.
- 1993-11-30