テナガエビ2群幼生の種々の環境塩分濃度下での酸素消費量
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概要
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テナガエビの河口域生息群(小卵産出タイプ)と淡水域生息群(大卵産出タイプ)について,ゾエア第一期幼生の酸素消費量を種々の環境塩分濃度の下で測定した。河口域生息群では,中濃度海水中(14.2, 21.3‰S)で酸素消費は低下し,それより低い(3.5‰S)あるいは高い塩分環境(32.0%oS)で有意に上昇した。この酸素消費量の違いは,浸透圧調節作用の関与によるものと考えられた。いっぽう,淡水域生息群では低塩分環境(淡水)での酸素消費の上昇は認められるものの,高塩分環境での有意な上昇は認められず,これらの幼生は高塩分環境での浸透圧調節力を失っているのかもしれない。テナガエビ淡水域生息群の環境塩分,特に高塩分に対する反応パターンは,淡水域への進化的移行という点で,このグループが本種河口域生息群と淡水産スジエビとの中間的な段階にあることを示唆している。
- 1992-12-31