日本産中新生のタカアシガニについて
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
山形県尾花沢市薬師沢支流の銀山層上ノ畑砂岩部層より産した指先化石の上面の広い溝,保存されている8ケの歯,第9歯の破損跡および内側の溝等を,伊勢湾産のタカアシガニ・雌の左鉗脚不動指と比較するに,よく一致し,また全体として,圧縮された太い形態を有し,Macrochcira ginzanensis n. sp.とされる。圧縮された太い形態は,雌雄変異によるか,種の差異によるか,いずれかであろうが,Fauna japonica等によるも,Macrocheira Kaempferiの雄の鉗脚は雌のより長いが,指部には,このような変異が見られない。中新世のMacrocheiraは,現生種に比較して小さく且つ太い形態をもっていたものと考えられる。Macrocheriaの巨大化は,中新世以後におこり,その分布が限られたものであろう。長野県下伊那郡千代村米川の千代小学校々庭の富草層群米川層中部より,カニの前節および指節を有する大きた歩脚破片を産している。その表面の症状円形突起は,中央に円い凹みを有し,タカアシガニの疣状円形突起に近似する。また,この歩脚破片の保存されている灰色シルト岩片上に,肝域の破片がある。これは,印象なので左肝域であるが,疣状突起の配列は,現生タカアシガニと比較するに,よく一致しており,微細な構造もよく保存されている。その大きさより,肝域は歩脚破片と別の個体に属するものである。Macrocheira sp.として,記載しておく。これらの産した千代小学校々庭北側の崖の同層準よりは,前に筆者の報告したParatymolus yabei IMAIZUMI, 1957が産している。小さい標本で,Paratymolus pubescensに似ており,その眼柄の大きい点は,Paratymolusの祖先型と考えられたが,甲面谷域は不明瞭ながら区分されており,甲面に疣状突起を散在し,鰓域には,褶雛が発達し,体の小さいことと,眼柄の大きいことは,Macrocheiraの子供なることを示している。その産状が20個体も密集しており,ともに,Macrocheira sp.の歩脚破片を産する事実も,この考えと一致する。Macrocheira yabei(IMAIZUMI),1957とすべきであろう。歩脚破片Macrocherua sp.とMacrocheira yabeiとの関係は,今後,中間の大きさの試料の蒐集をまって解決される問題であろう。Macrocheira yabeiの模式標本は現在,横浜大学に保存されているが,その登録番号,IGPS coll, cat. no. 79485が,そのまま歩脚化石Macrocheira sp.の番号として用いられた。ここに,タカアシガニの祖先が,日本の中新世に生存していたことを報告する。
- 日本甲殻類学会の論文
- 1965-09-20
著者
関連論文
- 北部キルギスの第4紀層の図式的解析, クルデュコフ, K.V.
- 遠刈田温泉,蔵王湖成層の草炭の^C年代 : 日本の第四紀層の^C年代(103)
- Eumunida(?)化石予報
- 化石カニ類の甲殻の電子顕微鏡的研究
- 岩手県気仙郡大船渡市馬越産 Pycnoporidium lobatum YABE and TOYAMA,1928
- 日本産中新生のタカアシガニについて
- 能登半島及び津山盆地産中新世カニ化石:Carcinoplax antiquaについての修正
- 進化の諸側面 : 中生代カニ化石Notopocorystesの進化