日本の淡水産介形虫類の7新種〔英文〕
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概要
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日本の淡水産介形虫類の新種7種を報告する。大阪青山短期大学の水野寿彦教授が淡水産動物プランクトンの検索図鑑の刊行を計画され,そのうち介形虫類を分担し,発見したものである。最近採集したものや20年前に作られた標本から,約30種の日本未記録の種を得たが,そのうち,カソドナ科キクロキプリス亜科のCypria(オヨギカイミジンコ属)・Physocypria(イボオヨギカイミジンコ属)各1種と,キプリス科コブカイミジンコ亜科のCyprinotus(コブカイミジンコ属)1種と,Hemicypris(ヒダリイボカイミジンコ属)4種の計7新種を記載する。Cypria biwaense(ビワオヨギカイミジンコ)およびPhysocypria nipponica(イボオヨギカイミジンコ)はともに,小型(0.5mm前後),第2触角に長い遊泳剛毛があり,第2胸脚の末節は正常型。前者は琵琶湖沿岸から,後者は各地の水田等から採集された。Cyprinotus setoensis(セトコブカイミジンコ)は,OKUBO(1974)がC.kimberleyensisの1変種として報告したものであるが,後背縁のこぶ状隆起が小さく,殻表の模様が明らかに異なるので,ここに新種として報告する。Hemicypris属は,コブカイミジンコ亜科のうち左殻の殻縁に小瘤状突起が並ぶもので,4種が発見された。外形はよく似ており,同定の面倒な種である。H.mizunoi(マルイボカイミジンコ)は,中型で,殻は厚く,側孔管が線状に見える。H.kibiensis(コイボカイミジンコ)は中型で,両殻片の背縁の前庭は殻の厚さより狭い。H.nipponica(シマイボカイミジンコ)はやや大型で,殻表に斜めのはっきりした褐色の縞模様がある。H.vulgaris(ヒダリイボカイミジソコ)はやや大型で,外形は前種によく似るが,殻表の後背部に薄褐色の大きな模様がある。.後2者は後背部に殻の厚さの2倍以上の前庭がある。ともに日本各地の水田に広く分布する。この属には他に,H.kaufmanni(VAVRA,1906)が長崎より報告されているが,筆者は確認していない。
- 1990-12-31