米国の野生生物保護管理における獣医師の役割(<特集>稀少鳥類の飼育・繁殖と野生復帰)
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概要
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1970年以来, 野生動物保護管理において野生生物獣医師が果たすべき役割に対する認識が, 国や州のレベルで高まってきた。その役割には, 疾病の診断や制御, 法医学病理, 絶滅危惧種の増殖と臨床ケア, 野生生物の移植(translocation)がある。渡り鳥や絶滅危惧種の管理, および数種の海洋哺乳類の主要担当機関である米国内務省魚類・野生生物局(FWS)は, 1975年に米国野生生物保健研究センター(NWHC)を設立した。このセンターでは, (1)FWSの野外調査員による診断補助, (2)特定の野生生物疾病に関する研究, (3)FWS野外調査員に対する野生生物疾病の診断と制御の教育を行っている。診断に関しては, 家禽コレラ(avian cholera), C型ボツリヌス中毒, 水鳥の鉛中毒の鑑別, ウ類のニューカッスル病, 鉛中毒の鑑別, 殺虫剤中毒, ハクトウワシとイヌワシの死因, ラッコやオオカミ, キットギツネ, アメリカシロヅルの死因に関する調査を行っている。メリーランド州ローレルのバテューシェント野生生物研究センターでは, 野生生物獣医師が渡り鳥に対する環境汚染の影響を測る研究の病理学的サポートを行っている。一方, 飼育下にある絶滅危惧種の臨床的ケアを担当するものもいる。我々は, 米国野生生物保健研究センターの歴史と組織の状況, FWSの一部であった当時の業務(これには特定の伝染病の調査など, 現在の業務も含まれる), 米国地質調査局の生物資源部門に属する研究センターとして新しく加わった業務について論じる。