保護収容したオオワシの放鳥後の行動追跡(生態学)
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概要
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保護収容したオオワシの野外放鳥後の監視と,今後適切な放鳥を行うために必要な知見を得ることを主な目的として,4〜6週間飼育された3羽のオオワシの亜成鳥を放鳥し,ラジオトラッキング法による追跡調査を行った。1月に放鳥されたオオワシは,放鳥5日目には約40km離れた海岸部で,他の野生の海ワシ類とともにクジラの漂着死体に群がっていた。その後,東部地域の結氷した湖などで4月初旬まで確認され,漁師が氷上に投棄する雑魚類を餌としていた。他の2個体は7月に放鳥された。そのうちの1羽は,放鳥後8日間は放鳥地周辺に滞在し,その後放鳥地の北西方向にある湖に移動して4日間滞在した後,確認できなくなった。別の1羽は,放鳥地周辺に5日間滞在した後確認できなくなったが,約2年後の1998年4月に,北海道東部の阿寒町で死体として回収され,鉛中毒による死亡と診断された。今回の調査では,夏期に放鳥したオオワシが北海道から無事に渡去したかどうか確認することはできず,夏期放鳥の安全性や効果を検討することはできなかった。今後,夏期放鳥個体が正常に渡去するかどうかの確認を含め,放鳥後の行動や移動に関するデータの蓄積が求められる。また,放鳥後すべての個体が数日間以上放鳥地周辺に留まったことから,放鳥は好適な餌場に近接し,人為的な撹乱や事故の可能性がなく,ねぐら林やとまり木を備えた環境においてなされるべきである。
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