家兎近心部大静脈筋の細胞内電位に関する研究
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概要
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1.家兎近心部上大静脈の細胞内電位の波形について,その大きさ,持続時間および立上り速度などを測定し,さらに細胞内電位におよぼす刺激頻度,温度,電解質や自律神経毒の影響を検討した.2.上大静脈より記録される活動電位の波形は,心房筋のそれとよく似ていて,波形だけからは心筋と大静脈筋とを区別することはできない.3.上大静脈の細胞内電位の大きさは,静止電位が左上大静脈で89.06±7.23mV,右上大静脈では86.60±5.67mVであった.活動電位は左上大静脈で112.63±9.18mV,右上大静脈では116.10±9.28mVであった.4.対照としてとり上げた右心房については,静止電位が88.58±10.63mV,活動電位は112.17±7.02mVであった.この右心房の値は左右の上大静脈の値との問に有意差がなかった.5.活動電位の持続時間に関しても,右心房と大静脈の平均値の問に有意差がなかった.活動電位の全持続時間は150〜300msecであった.6.活動電位の立上り速度は,左上大静脈では122.8〜234.3V/sec(平均186.3±39.17V/sec),右上大静脈では49.9〜159.3V/sec(平均94.2±33.18V/sec),右心房では148.7〜215.5V/sec(平均172.3±30.16V/sec)であった.7.刺激頻度は主として活動電位の持続時間に影響を与え,刺激頻度が減少すれば持続時間が延長し,頻度が増加すれば短縮した.8.外液の温度を下げると,活動電位の持続時間が延長し,活動電位,静止電位および伝導速度が小さくなった.9.Naイオンは主として活動電位の大きさに,Kイオンは主として静止電位の大きさに影響を与え,Caイオンは主として再分極相に影響を与えた.10.epinephrineとatropineは10^6g/mlの濃度でそれぞれ単独に投与しても,両者とも電位の大きさや持続時間に大きな影響は与えなかった.acety1cholineは10^6g/mlの濃度において,活動電位の持続時間を著明に短縮した.11.以上のような大静脈筋の電気生理学的性質は心筋のそれときわめて類似しており,平滑筋と類似の性質は少ない.したがって,近心部上大静脈より記録される細胞内電位はその心筋様横紋筋の膜電位に由来するものと思われる.
- 社団法人日本循環器学会の論文
- 1967-04-20
著者
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