フォワーダーの多人格化と契約サブシステムの意思決定に関する試論
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概要
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航空運送の発展にともなって,貿易システム構造,つまり制度や慣習がどのように変化してきたのかを分析すると,物流サブシステムにおける「フォワーダーの多人格化」を特徴とする変化に注目しなければならない.「フォワーダーの多人格化」とは,フォワーダー企業が様々な機能を駆使して,複雑な物流を迅速にそしてスムースにこなしていくのである.一方で,「多人格化」は,輸出入業者には,物流過程が見えなくなってしまうという「ブラックボックス化」や,ひとつのフォワーダー企業の中で,異なった部署が,かたや荷送り人として,かたや航空貨物代理店として運送契約を締結する「企業内契約」という現象を生じさせた.特に「ブラックボックス化」では,輸出者から輸入者への所有権と危険の移転および引渡など商流過程が不明確となってしまうのである.と同時に,契約サブシステムにおいても,物流という観点からの意思決定を促進させる可能性がある.貿易取引における輸出者から輸入者への費用分岐については,伝統的にトレードタームズを使用し,時系列で費用を並べ,ある時点まで輸出者が負担し,それ以降を輸入者が負担するという方法を採用する.しかし,貿易費用には,輸出者が負担するより輸入者が負担した際に,その金額が安くなるものや,その反対に輸出者が負担した方が安くなるものがある.そのような費用を,輸出者と輸入者がそれぞれ選択し,分担できるとしたら輸入者の転売価格は,従来のトレードタームズを使用する場合より安くなるはずである.これを実現させるには,輸出者と輸入者が何らかの形で,友好的な交渉ができることと,それに「多人格化」という概念で表されるようなフォワーダーの一括した物流過程への関与が前提となるのである.
- 立命館大学の論文
- 2001-03-31