移転価格税制-利益分割法における経済理論からのアプローチ
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概要
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企業活動のグローバル化と経営資源として無体資産の重要性の増大により,従来移転価格税制が前提としていた「独立企業間価格」の算定がより困難になっている.とくに,多国籍企業においては,多くの場合何らかの無体資産を保持,活用してグローバル経営を行っている.これにより,多国籍企業の内部取引の実態把握や無体資産の評価の問題が明らかとなる.さらに従来の比較可能な類似取引を見つけ出し,類似取引と移転価格が問題となっている取引との比較により独立企業間価格を求めるという方法の適用が困難になってきたのである.そこで1980年代後半から移転価格税制の議論のなかで注目され始めたのが,多国籍企業の「利益」に着目して移転価格を決定する方法である.利益法としては,あくまで比較可能な企業を見つけ出しその企業と利益を比較する利益比準法と,取引の両当事者が互いに独立の関係であれば達成するであろう利益を求める利益分割法が挙げられる.なかでも今回は,納税者の予測可能性と実務等での利便性から利益分割法に焦点を当て,従来比較可能な企業または各産業別平均との比較により移転価格を決定してきた方法ではなくシャドウ・プライス法と投下資本利益分割法を用いて移転価格を算定するという方法を検討する.さらに多様化された多国籍企業の活動パターンを5つ-マーケティング・サテライト,ミニチュア・レプリカ,合理化された製造業者,製品スペシャリスト,戦略的独立子会社に分け,これらの活動形態にどちらの移転価格算定方法が一つの方法として適当なのかも考えていく.
- 立命館大学の論文
- 2000-03-31