ビッグバンと日本人,そして日本企業の経営戦略
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概要
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今度の金融恐慌,金融ビッグバンはアメリカに対する第二の敗戦・占領だといわれている.不良債権対策を行い,システムを再構築してから,ビッグバンに踏み込むべきだった.戦略無き金融政策がこのような敗戦を招いた.ビッグバンのかけ声とともに語られているのは市場原理万能論である.市場原理主義がアメリカでそれなりにうまく行ったからと言って日本でそれがうまく行くという保証はない.規制緩和には規制強化が伴うというのが常識ではないのか.市場万能論のもと持合い崩れが喧伝されている.これによって経営者裁量範囲が縮減されると予想される.経営者裁量範囲の縮小は長期的視野に立った経営を困難にし,雇用不安が従業員の勤労意欲を低め,「日本的経営」は打撃を被るであろう.組織の不安定は結局は経済の不安定をもたらす.事実日本は不況にあえいでいる.元来経営戦略は市場を出し抜くことで超過利潤を獲得することが目的である.企業は競争戦略によって経済学の教科書に書いてあるような状態に市場競争をもっていかないような努力をしているのである.企業の経営戦略は競争の大乱戦を避けて利益を確実に上げることを目指すのである.企業は他の追随を許さない競争優位の構築を目指すのである.変化に対応して競争にうち勝つためにも,供給業者や流通業者との継続的,かつ密接な関係が必要であるとドラッカーは言っている.これこそ日本的システムではなかったか.日本企業の競争優位構築のためには,持合いを崩して市場メカニズムを機能させるより,企業間関係,企業と銀行の協調的関係,信頼関係を再構築することが必要であろう.
- 1999-03-31
著者
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