ラテン・アメリカを足場にグローバル化を図るスペイン企業
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概要
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1990年代、ラテン・アメリカ諸国は空前の直接投資ブームに沸いたが、その主役はスペイン多国籍企業である。80年代までスペインには多国籍企業と呼べるものは皆無に等しかったが、90年代になるとスペイン企業は対ラ米投資を活発化させた。その結果スペインは、アメリカに次いで同地域向け第二の投資国に躍進した。スペインはEC(現在のEU)加盟(1986年)やEUの通貨統合(1999年)に向けて70年代以降進めた自由化や産業再編を通じて産業の競争力を高めていった。一方、80年代に対外債務危機に見舞われ「失われた10年」を経験したラ米諸国では、危機の構造要因であった従来の輸入代替工業化戦略を軸とする国家統制経済から市場原理に基づく開放経済へ構造調整を進め、マクロ経済や政治の安定を獲得した。加えてNAFTA(北米自由貿易協定)やMERCOSUR(南米共同市場)など域内経済統合の動きも活発化した。スペイン企業は、潜在性が高くスペインならではの比較優位をもつラ米市場に着目し、自国での自由化や民営化の経験をフルに活用することによってラ米地域での地歩を固め、さらには外国企業を含む戦略提携などを通じてグローバル化を図っている。
- 2003-02-18