現預金項目収支計算書分析に関する一試案(その1) : 流動比率等の比較を考慮して
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概要
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「現預金項目収支計算書」とは、筆者倉田三郎の造語である。世間に広く使用されており、制度的に定着しているように見える言葉はキャッシュフロー計算書である。しかし、このキャッシュフロー計算書という用語は、制度的に定着している貸借対照表や損益計算書といった用語に対置する言葉としては如何なものかと愚考している最近である。明治時代の初期、海外から学術用語の導入に際して、可能な限り短い日本の言葉で表現するように求められた結果、「簿記」とか「新聞」、あるいは「銀行」といった、すばらしい用語が生み出されてきた。この先例に習うならば、キャッシュフロー計算書という用語についても、もっと考慮・工夫できなかったものかと反省しきりの昨今なのである。従って、この拙稿では「現預金項目収支計算書」という用語を使用したい。さて、現預金項目収支計算書は、今日ではキャッシュフロー計算書という訳語で制度化され、情報提供手段としてそれなりの成果をあげてきていると評されている。しかレ成果をあげてきているというのは、たんに公表されてきているにすぎないということだけではあるまいか。現預金項目収支計算書の内容を理解する・読みとるということにおいてはまだまだであるような感じがするのである。他の財務諸表の貸借対照表や損益計算書は公表されて以来の歴史も厚く、これらの財務諸表を読みとる技術も「財務諸表分析」あるいは「経営分析」として十分に発展している。しかし、現預金項目収支計算書については、これを読みとる技術はまだまだ発展過程にあると言えよう。本稿は現預金項目収支計算書を読みとる技術についての試み、その試みから将来の課題を提案してみようとするものである。それはまさに試案・課題の提案段階にすぎない。将来は有価証券報告書等に記載されている現預金項目収支計算書を集めて、企業の収益性・流動性との関係について情報価値を高めるような、なんらかの効果的な分析の公式が提案できたらよいがと思っているところである。
著者
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