「山」の多義性についての認知意味論的分析
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概要
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本発表では,主に「山(ヤマ)」と訓読みして独立形で用いられる場合を中心的な対象として,文芸作品などから採集した用例を基に,認知意味論における「放射状カテゴリー(radial category)」の枠組みを適用し,「山」の多義的意味認識の原理を明確化した。その結果,「山」の多義性には,a)地理,b)植林地,c)鉱石の採掘現場,d)形状,e)量,f)不動物,g)障害物,h)頂点,i)限界,j)豊富な自然,k)遠隔地の意義が認められた。「山」の多義的意味認識は,a)の地理モデルを中心に置き,そのメタファー的拡張により,b)〜k)までの各意義が派生する。そしてそれぞれの意義は,互いに対をなす形で,メトニミー的拡張により,各々の多義のネットワークを結び付けることが明らかとなった。b)とc)は植林や採掘という山における仕事内容を表すメトニミー関係で結ばれ,d)とe)は山の形状とそこから喚起される量の多さというメトニミー関係で結ばれる。f)とg)は眼前にそびえ立つ山の風貌から,障害物と不動物というメトニミー関係で結ばれる。h)とi)はそびえ立つ山の頂きという所から最上点というメトニミー関係で結ばれ,j)とk)は山の様態として,人手の入りにくい場所というメトニミー関係で結ばれる。また,人手が入りにくく,自然が豊富であるということは,b),c)の植林地や鉱石の採掘地として活用され得る。そこではa)の地理モデルを中心に置き,そのメタファー,メトニミー的転用によりb)〜k)までの周辺への意味の拡張が生じ,「山」の多義が成立する。こうした多義構造のネットワーク関係を示したものが,以下の図である。[figure]このように「山」の多義性は,「主体の眼前に屹立する地表の隆起した形状」という地理的認識を中心に置き,そのメタファー・メトニミー的拡張により形成されることを明らかにした。
- 2001-09-29
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