『哲学字彙』における漢文注記の訳語
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概要
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本発表では,哲学専門の対訳辞書である『哲学字彙』(以下,本書と称す。初版:明治14,再版:明治17,三版:明治45)における漢文注記の付された訳語を取り上げ,(1)漢文注記の意義,(2)中国古典に典拠をもつ訳語については,原語との意味のギャップが訳語の定着にどう関わっているか,(3)漢文注記の訳語が後続の対訳辞書に与えた影響を明らかにした。考察の結果をまとめると,以下のとおりになる。訳語に付された漢文注記は,訳語として用いられている漢語の種々の意味と関わっている。つまり,訳語に用いられた漢語には,中国古典にも一語で様々な意味があり,そのうち原語の意味に一番近いものを選別するという機能がある。次に,原語との意味のギャップが,訳語の定着にどう関わっているかについては,以下のとおりである。「権利」,「宗教」などは,最初は原語の意味から少し離れていたが,その後,完全に原語の概念を表すようになり,現在まで生き残っている。つまり,これらは,漢語の意味が西洋学問の流入により変ったのである。「化裁」,「張本」などは,原語の意味から離れていて死語となった例である。そして,幕末明治期に造られた訳語には,中国古典に典拠をもつもののみではなく,「進化」,「哲学」のように漢籍・国書ともに用例の見られないものもある。特に,「進化」は中国古典に典拠をもつ「化醇」との競争で勝った例である。この「化醇」で見るように,原語との意味のギャップがほとんど見られないのに,廃語となった例は数多くある。本書の漢文注記の訳語は,先行する辞書からの影響はほとんど受けておらず,後続の『英和字彙』(再版)と『和訳字彙』に大きな影響を与えている。特に『和訳字彙』では,本書の漢文注記も大量に取り入れている。
- 2000-09-30
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