『露日単語集』に基づく18世紀薩隅方言のエ列音
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概要
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18世紀前期の薩摩漂流民が著したとされる『露日単語集』には, エ列音が「e」「Б」という2種類の文字で記されている。本稿では, この2種類の文字について, その使用状況と, 当時のロシア語正書法, 現代薩隅方言の実態等をもとに考察し, 本資料のエ列音表記が次のような音韻論的特徴を示していることを指摘した。すなわち, 語頭の「エ」ならびに「ケ」「セ」「テ」「ネ」「メ」「ゲ」「ゼ」「デ」「ベ」に2種類の音節が存在していたということである。そして, その各音節の2種類のうち少なくとも1種類は, 口蓋性を備えていたと考えられる。このことは一地方の方言史に止まらず, 日本語音韻史の解明に有効な既存の資料を解釈する上でも, 重要な意味を持つものと考えられる。
- 2004-04-01