清濁分化と促音・撥音
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概要
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諸種の濁音のうち、連濁の結果生じた濁音が最も古い層に位置するという仮説に依りつつ、清濁分化の経緯、促音・撥音の発達の音声的下地についての推定を試みる。清濁の対立が存在しない状態において、語としてのまとまりを標示するための母音間の無声子音の有声化と、複合語の内部境界を標示するための強閉鎖(閉鎖延長)という、二つの相反する動因が複合語の内部境界に前鼻音を発達させる。これが連濁現象の起源であると同時に、濁音そのものの起源であった。その結果、清濁の対立は「非鼻音/鼻音」という形で出発し、引き続いて「とぬし>とじ(刀自)」のごとき連声濁現象を起こしたため、濁音が複合語の内部境界以外にも現れるようになり、濁音の「音韻化」が進行した。強度強調・表情付加や語の内部境界標示のための閉鎖延長には、声帯の振動が停止するものと継続するものとがあり、それぞれの延長部が促音・擬音の下地となった。
- 2003-04-01