生物学的インジケータにおいて酵素が活性を有したまま芽胞が死滅している一事例
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概要
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当院では滅菌保証の判定にAttest^<TM>短時間判定用生物学的インジケータ1292およびAttest^<TM>1264(3Mヘルスケア社製,以下Attest^<TM> )を用いている.通常Attest^<TM>は滅菌工程が完全であれば,芽胞と酵素の両方が不活性化されるため,オートリーダーの判定は(-)を示し,追加培養によっても培地の変色を認めない.しかし,当院でハイスピード滅菌器として使用しているAIIIS-B09E(サクラ精機社製)のカンシ工程(真空3分1回・滅菌132℃10分・乾燥15分)において,培地の変色は認めないが,オートリーダーの判定では(+)を示すと言う事例が発生した.その後7日間継続的に追加培養を行ってみたが,状態に変化は見られず,Attest^<TM>バイアルの製品不良の可能性も考慮し,3Mヘルスケアにバイアルの分析を依頼したところ,芽胞は死滅しているが,芽胞自身よりも熱に対して若干高い抵抗性を有する酵素が活性を有したままであった.当院ではこれを,滅菌不良と同等に捉え,サクラ精機に協力を頂き,滅菌器のドレーン直上と中央奥側にデータロガーを配置し,缶内の温度分布の測定を行った.一般に最も温度上昇の条件が悪いとされるドレーン直上でも最高133.4℃まで温度上昇を認め,装置の性能的には問題なかったが,ボウィー・ディックテストにおいて,カンシ工程のみ缶内に残留空気を認め,実験の結果この残留空気は真空工程を3回行うことにより消失することを確認した.残留空気が缶内の温度上昇の妨げになることは広く知られているが,カンシ工程は真空の回数の設定変更ができず,残留空気を完全に無くするのは不可能である.当院では,カンシ工程で行われる滅菌については,残留空気をなくすることができない以上,このような事例の再発は防げないと判断し,これを使用禁止とした.
- 2003-04-01