臨床工学技士から見た医療機器の安全性
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概要
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〔はじめに〕機能は満足しているが,臨床現場の環境・使用状況などが機器設計上どの程度考慮されているか疑問である機種も散見する.安全な医療のためにはあらゆる角度から安全性を考慮されるべきである.そこで,臨床工学技士から見た医療機器の問題点について提起したい.今後の機器開発の参考になれば幸甚である.〔機器の形状〕シリンジポンプはICUなどでは1患者に10台以上使用することもまれではないが,いずれの機種も点滴スタンドにクランプした場合のバランスを考慮されていないため,ポールを中心に振り分けるとシリンジが逆方向となりチューブが絡みやすく,視認性が問題となる.また,シリンジポンプ本体の後ろよりにシリンジをセットするタイプが多く,操作上充分な間隔をあけてクランプする必要があり,患者より充分低い位置にシリンジポンプをセットし(サイフォニング防止),かつ視認性を確保するためには,1台の点滴スタンドに3〜4台のシリンジポンプしかセットできない.〔構造と精度〕機種によっては固定のためシリンジ外筒のツバを挟む間隙が広くかつ押さえが弱いため輸液図路圧あるいはサイフォニングにより50mlシリンジでは約1.5mm外筒がずれる場合がある.内筒が押し子に固定される方式は機種により異なるが押し子と爪の間隙に挟み込むものでは同様の負荷により約1.7mm内筒がずれる.さらに,押し子は約0.5mmの遊びがある.1235N【○!R】(ATOM)では,これらにより約2.5ml過量または逆流することが起こり得る.また,押し子に内筒のツバを挟み込み一見改良されているタイプがあるが実際には約1.Ommずれ,押し子そのものが0.9〜1.4mm遊びがあるためTOP 5300【○!R】(TOP)では約2.7mlの影響を受けることがあり得る.同機種では,シリンジの選択が毎回可能であるが,誤って確認した場合には異なるメーカの条件により作動してしまうためインシデントを誘発する事例が発生している.
- 2003-04-01