法改正と医療産業市場への影響予測
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
経済の低成長は医療産業市場にも影響を与え,業界の出荷額はこの3年横這いで推移している.ただME機器と消耗品であるMedical Devices(以下MD)にわけてみると,両者の成長性には差がでている.すなわちME機器は主力の画像診断装置をはじめ,一部を除きここ3年は出荷が減少している.これに対し,MDは伸び率が低くなったとはいえ着実に出荷額が増加している.そのため両者の出荷額は5年前にその規模で逆転し,医療産業全体に占める比率では,ME機器が35.7%(1996年)から31.1%(2001年)となったのに対し,MDは37.9%から41.2%に差が拡大した.この差はME機器が単に普及限界に達しているという理由だけでなく,病院の機能分化の進行とかかわりがあることも考えられる.すなわち高齢社会への移行をふまえた医療保険改革,医療制度改革がドラスチックに行われつつあるが,とくに第4次医療法改正で明らかになった病院の機能分化は,急牲期を担う一般病床がこれまでの約半分になるという事態をもたらし,機器・用具のユーザ構成の変化が予見されるが,すでにこの変革に対峙するユーザの中には,ME機器の買い控え現象もみられるからである.基本的に大型のME機器は高度先進医療施設,地域中核施設,専門医療施設に特化する病院に集約され,トータルのポテンシャルは縮小しよう.もっとも限定された施設では,その機能を明確に打ち出すためのリ・デザインが必要となり,そこでの需要は拡大する.この点,SUDを中心とするMDは,高機能・高付加価値のもの(もともと使用施設が限定されている)を含め,トータルの需要はそれほど減少しないとみられる.ただ価格低落傾向への対応から,生産は海外に一段とシフトし,当該市場も産業の空洞化の影響を受けることは避けがたくなる.すでに大方のMDは,日本国内での生産と海外での生産間で完全に近い代替関係ができており,国内の生産や雇用の減少をもたらす可能性が強まっている.
- 2003-04-01